まずは、これを見ていただけますか。
なんだかわからないと思いますが、これは銅のコインです。10円玉と同じようなものと思っていただいて大丈夫です。(正確には10円玉は銅95%と亜鉛、スズの合金ですが、写真のものは100%の純銅です。)
しかし、黒くて汚いですよね。
これは本来はピカピカで綺麗だったんですが、「焼きなまし」という工程で黒くなりました。「焼きなまし」というのは、「焼鈍(しょうどん)」とも呼ばれるのですが、硬い金属に熱を加えることで柔らかくすることです。
銅を圧延してからプレスすると加工硬化で硬さが増します。そのため、柔らかくするために高温処理をします。
すると、酸素と反応をして黒くなります。つまり、写真のものは酸化して黒くなっているのです。常温でも、長い時間をかけて酸化して黒くなってくるのは経験上わかると思います。
さて、次にこの写真です。
綺麗になってますね?
これは焼きなましをする前の写真ではありません。先ほどの黒い状態から「ある作業」をするとこのようになります。
わかりますか?
これは、一応、私の会社でやっている仕事です。銅を酸化しないで柔らかくすることもできます。
何をするかというと、「水素雰囲気での熱処理」です。つまり、水素の中で高温にすることで、酸素と反応しないで焼きなましができるのです。
しかも、さきほどのような黒くなった銅も、水素の中で熱処理をすると酸化還元反応でピカピカになって出てきます。
銅の表面が酸化して黒くなっているときに、水素があると酸化物が水素と化合して銅から除去されるので綺麗になるという理由です。
水素は爆発しやすい危険なガスなのですが、注意して取り扱いをすれば大丈夫です。
10円玉はタバスコで磨くときれいになりますが、たくさんの品物を短時間できれいにするには、水素中での熱処理が便利です。(^_^)/
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